上智大学弁論部
ディベートを愛する皆様へ
2023年4月11日
昨日、私たち上智大学弁論部は大学の新歓イベント(通称:フレマン)において、「上智大学弁論部(部長)を論破したら10万円」という企画を執り行いました。
結果、約100人のお客様にご参加いただき、フレマン全体を通して見ても、屈指の盛況ぶりを誇る企画となりましたことを大変喜ばしく思います。観客はほぼ全員ディベート未経験者の方でしたが、この企画をきっかけにたくさんの方がディベート本来の魅力に魅せられ、30人以上の学生が仮入部してくださいました。そしてその多くは、当初はディベートに興味があるわけでは無かった方々でした。ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。一人でも多くの方にディベートの本来の魅力を知っていただけて本当に嬉しかったです。
さて、この企画を実施するに当たり、ディベートを長く続けている方々から様々な反響が多くありましたが、特に「論破」という単語を使用した事への否定的な意見が多かったと理解しております。そういったご意見への返答を中心に、私たちが何を思ってこの企画を実施したのかを書きますので、目を通していただけると幸いです。
まず、私たち上智大学弁論部はディベートが論破でないことを理解しております。美しい論理を紡ぎ、ジャッジを説得し、オーディエンスを納得させる(オーディエンスボート有りの場合)競技こそ、ディベートの本質であり、魅力だと考えております。今回の企画においても、企画開始の前には、「私たちはディベートを論破とは思っていないが、その判断は皆様に委ねるからとりあえず見ていってください。」いう旨の説明を行い、企画後には私たちが実際に行ったディベートをもとに、「世間のイメージするディベートとは違い論破などはしなかった。それでもディベートは今みたいに楽しく素晴らしいものなんだ」という旨の総括をいたしました。
さて、近年、ひろゆき氏に代表される論破を得意とする論客の大流行により、ディベートは論破をする競技だとのイメージが持たれてしまいました。多くのディベーターは「ひろゆき以前」は、ディベートを論破だと思っている方々に逐一丁寧にディベートは論破では無いと説得する気力がありました。草の根運動を粘り強く行っていました。
しかし、ただでさえ競技人口が少ないディベート界は、圧倒的な“論破の流行”の前に、「ディベートは論破ではない」という主張もむなしく、論破の波に飲み込まれてしまいました。小学生の流行語ランキング1位が「それってあなたの感想ですよね?」だった衝撃は記憶に新しいでしょう。この間インターンの面接に行ったら、ディベートをしているという経歴を見られただけで「仕事中にひろゆきみたいなのは勘弁してね〜(苦笑)」と言われました(実話)。
ディベート界は、かつて無い勢いの論破の流行に対して効果的な対抗手段を編み出せておりません。かくなる上は、私たち上智大学弁論部は、プライドを捨ててでも論破という言葉の流行を上手く利用することで、一人でも多くの学生にディベートを楽しんで頂いた方が有益なのではないかと考えました。もちろん、論破に興味を持っていただいた方に「ディベートは論破では無い」ということを伝える義務と、論破に興味が無いけどディベートに本質的に向いている人材へアプローチし続けるという義務は絶対に果たします。
以上のような実験的な思想の嚆矢として、今回の新入生歓迎会で論破を銘打った企画を開催した次第です。
ディベートを愛する皆様へ、私たちは「論破」に対するスタンスを多様化させる試みの途上です。私たちの選択が正しいという確信も自信もありません。ただ、上智大学弁論部のディベートへの愛だけは信じていただきたいです。さらにわがままを言えば、温かく見守っていただけると幸甚です。
4月の新歓開始以来、私たちは新入生の獲得に大変難儀しておりました。何か決定的な策を打たねば部が消滅してしまうという強い危機感があり、既存のディベート界との折衝は二の次になっておりました。それに加え、企画の発表が唐突だったことも重なり、一部ディベート界の皆様からの信頼を損なう結果になってしまいました。振り返ると、我々の意思決定過程は常に少人数の学生により行われておりました。これを機に意思決定課程を改善し、改善案がまとまり次第公表させていただきます。改善の第一弾として、意志決定過程に皆様からのご意見を賜りたく存じます。ツイッター上でのご意見は追い切れないので、確実にご意見を届けたい場合は公式メール(mailアットsophiadebate.com アットを@に読み替えてご利用ください)までお願いします。メールに送られたご意見は必ず運営会議の議題にあげ、返信をいたします。
末筆ながら、本企画に理解を示しジャッジや運営にご協力いただいた方に篤く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
上智大学弁論部 運営一同
【その他、多くいただいたご質問】
Q:上智杯で集めた寄付金を賞金10万円に使ったのでしょうか
A:使っておりません。昨年12月、上智大学弁論部は第41回東京大学総長杯争奪全国学生弁論大会で優勝することができました。その成績が、上智大学弁論部および日々私たちを応援していただいている皆様の活動として大学に認めていただいたことなどから、後期活動支援金15万円をいただきました。このお金で賞金や参加賞の用意も含めて全額まかなう企画でした。第1回上智杯で31675円、第2回で17166円ものご寄付をいただきましたが、本企画には1円たりとも充てておりません。ご寄付金は次回上智杯開催資金に充てる予定です。
Q:論題とフォーマットとジャッジ体制を教えてください
A:論題は「会議におけるカタカナ語の使用は会議の質を下げる」NADEの中学フォーマットを利用した日本語の即興型ディベートです。外部から招聘したジャッジ5人5票とオーディエンス3票(過半数の支持を確保したサイドの総取り)の合計8票で判定を行いました。
Q:試合結果を教えてください
A:肯定4(ジャッジ票1:オーディエンス票3)対否定4(ジャッジ票4:オーディエンス票0)で引き分けでした。私たちが肯定、挑戦者が否定でした。挑戦者チームは賞金の授与条件にはおしくも届きませんでしたが、健闘をたたえてソフィアジャージを進呈いたしました。
Q:公平性をどう担保したのでしょうか
A:100を超える論題リストから無作為に選出した5つの論題の中から挑戦者チームに選択していただきました。サイド決めはじゃんけんで決定しました。ジャッジは全員部外者から招聘しました。オーディエンスボートも導入しました。